想像を超えた申し出に、美華の思考回路がいったん停止する。
竹下の上司である正隆の話を白紙に。それを伝えるだけで終わると高をくくっていた美華は、口を半開きにして固まった。
「それは」
できないと美華が口を開きかけたそのとき、ふたりのテーブル脇で人が立ち止まる。
「残念ながら無理ですね」
会話に答えたかのような声をかけられ目線を向けた美華は、びっくりして一気に息を吸い込んだところで止めた。
博人だったのだ。
(どうしてここに!?)
現れるとは想像もしない人物の登場に目を見開く。ちょうど彼に関係する話だったのもあり、タイムリーすぎて言葉が出ない。
博人はどことなく不機嫌そうに眉をひそめていた。
結婚すると決めておいて、ほかの男となにをしているのかといったところか。
でも、やましい要素はなにひとつない。



