溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


いったいどうしたら、おしとやかなイメージを抱けるのか。美華の想像も裏切られた気分だ。

食べ物まっしぐらの美華の振る舞いは、まさに上品とは正反対。着物を着たところで隠せるものでもない。

(お父さんってば、どんな写真を見せたの? おしとやかなんて、私のイメージとはかけ離れすぎてるじゃない)

とはいえ、どのみちこの場限りの出会い。今さら澄まして女性らしくしたところで意味はない。
これからも両親から結婚をせっつかれるのかと思うと気が重いが、彼だって上司に言われて渋々ここへ来ただろうから。

だいたい見た目がここまでいい男に彼女がいないわけがないのだ。性格はどうなのか知らないが、この容姿で世の女性が放っておくはずはない。
それこそ美華よりもワンランク、いやもっと飛びぬけた、いわゆる〝いい女〟が隣に立つ()は容易に想像できた。


「こういった和菓子なんかも、芸術的な面ではキミと通じるところがあるんだろうね」
「え? げいじゅつ……てき?」


なんのことかと目が点になる。

(私と芸術が通じる? ……あぁ、もしかしたら絵本のことを言ってるのかな。ざっくりと言えば、芸術の部類と言えるのかも)