「無理して合わせなくていいんだよ。人がどう思うかとか、いちいち考えるな。考えてたら身が持たないぞ」

「なんだか咲がもっともなことを言ってる……変なの」

「おい」

「あはは、冗談だよ」

咲と一緒にいると温かい気持ちになる。

それはきっと咲がそうだからなんだと思う。

一見冷たそうに見えるけど、実はとても優しくて温かくて、人のことをちゃんと考えられる。咲はそういう人だ。

しっかり自分を持っててすごいな。

「お嬢様のくせに、人の顔色うかがってんじゃねーよ」

「どういう意味よ」

「もっとワガママでいいんじゃねーの。葵は遠慮しすぎ」

「え、そんなことないと思うけど」

「出会ったときは図々しかっただろ。無理やり裏口から入ってきて、隠れさせてくれって」

「あのときは必死だったんだよ」

「俺はそっちの葵の方が好きだ」

「えっ!?」

「やべ、なに言ってんだ……っ」

咲はしどろもどろになりながら、ガーッと自分の髪をかきむしった。

それを見てあ然とする。