「ウソ……」

それじゃあ全部、私の勘違いだったってこと……?

なんだ。

「勝手に勘違いして、嫉妬したんだ?」

なぜかニヤリとほくそ笑む咲。

「ま、紛らわしいんだってば!」

「素直じゃないな、葵は」

「……っ」

く、悔しい。でも、勘違いでよかった。

よかったよ……。

「そんなに俺が好きなんだ?」

「そ、そうだよ。悪い?」

またかわいくない態度。でも、自分じゃどうにもならない。

もっとかわいく言えたらよかったのに……。

気まずさから手を振りほどこうとすると、逃さないとでもいうように強く握り返された。

「逃げるなよ」

冷静な声とともに強引に振り返らされ、今度は咲の顔が近づいてくる。

「もう、なにすっ……」

それは一瞬の出来事で……。

甘く強引な唇が私の唇に重なった。

触れるだけの軽いキス。すぐに唇は離れたけど、理解が追いつかない。

「いくぞ」

咲は何事もなかったようにプイとそっぽを向いて歩き出す。だけど耳の縁が真っ赤に染まっていた。

「さ、咲! 照れてるの? ねぇ、照れてるの? なんで?」

「なんでって、照れるに決まってるだろ。まったく、時と場所を考えろっつったのに」

まるで私が悪いと言わんばかりに悪態をつく咲。