開いた口が塞がらないって、まさにこのこと。

「だから気にしてないって言ってるじゃん」

「あたし、鳳くんのことになると周りが見えなくなるの。攻撃することでしか対抗できなくて……」

「…………」

人を好きになると振り向いてほしいと思うのは当たり前の感情で、瀬尾さんの気持ちはわかる。

でもだからって、人を傷つけていい理由にはならない。

「最低なことした」

「…………」

「さすがにもう、やめるから」

そう言われたって、これまでのことをすぐには許せそうにない。

だけど本気で反省しているのか、とても真剣な目で私にそう訴えた。

許せない……だけど、許さないままでいるのも嫌だ。

時間がかかるかもしれないけど、いつかは許せる日がくるといい。

「どうして私に振られたことを話してくれたの?」

「それは……」

数秒の沈黙のあと、意を決したように瀬尾さんは言った。

「フェアじゃないと思ったから」

「フェアじゃない?」

「病気のこと打ち明けてくれたから」

それがどうしてフェアじゃないに繋がるのかはわからなかったけど、きっとそれは瀬尾さんのプライドで、少なくとも私のことを考えてくれた結果だったんだろう。

そう思うと心がかなり軽くなった。



そう言って空き教室を出た。