「なんなのよ、心臓病って。どうしていきなりそんなことあたしに……っ」

「さぁ、どうしてかな」

「病気であろうとなかろうと、あたしはあんたが大嫌い。鳳くんの特別な相手ってだけで、ムカつくの」

特別な相手って、それは瀬尾さんの勘違い。そう思ったけど言えなかった。

「振られたから……」

「え?」

「体育祭の日、鳳くんに告白して振られた……。で、あんたに八つ当たりして背中押したら急に倒れて……っ」

振られた……?

瀬尾さんが?

八つ当たりって……。

「いくら揺すっても目を開けないし、顔色も悪くて……そしたら鳳くんがきてめちゃくちゃ取り乱してるし……あたし、とんでもないことしたって……怖くなって」

振り返らずに聞いていると、途中から瀬尾さんの声が震え出した。

「逃げたの」

「瀬尾さんのせいじゃないよ……?」

ゆっくり振り返ると、瀬尾さんは目を真っ赤にして唇を噛みしめていた。

ウソ……。

泣いてる?

その涙がなんの涙なのかはわからない。でも後悔しているように見えた。

「あんたのことは大嫌い。でも、これまでのことは……八つ当たり、だから」

「…………」

「……ごめん」

聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声だったけど、ちゃんと私の耳に届いた。

まさか瀬尾さんの口から謝罪の言葉が聞けるなんて。