千紘さんのありがた~いお話

 大きな目でいまどきな感じの可愛らしい子だ。

 あのときの女生徒だった。

「田所」
とようやく気づいたように、おじいちゃんから視線を引きはがして、千紘が振り向く。

 田所愁子(たどころ しゅうこ)というらしいその生徒と家族が挨拶してきたので、真昼も立ち上がり、千紘に紹介されながら、ペコペコ頭を下げる。

 ひい、田所さんに値踏みされるように見られています、と思いながらも頭を下げていたのだが。

 真昼たちが座ったあと、歩いていきながら話している家族の会話が聞こえてきた。

「まあ、先生の奥さんって、綺麗な人ねえ」

「そうお?」

 愁子が母親に相槌を打った、そうお? に、ちょっぴり悪意を感じ、真昼は固まる。

 やはり、千紘さんは学校でおモテになっているようですね、と探偵や興信所でなくとも、すぐにわかるようなことに気づき、夫に不信感を抱く。

 いや、一方的にモテているだけなのだが。

 世の中には、素敵な女性が山と居るので、不安になる。

 いやまあ、仮の妻なので別に関係ないのだが。