千紘さんのありがた~いお話

 もう貴方と、貴方の顔に慣れたなどと分不相応なことを考えたりなどいたしまして、どうも申し訳ございませんでしたっ、と思いながら、真昼は口を開いた。

「ち、千紘さんっ。
 あのっ、どうかなさいましたか?」

 すると、千紘は、ん? という顔をする。

「あの……ずっと、こちらを見られているようなのですが」
と遠慮がちに問うと、

「ああ、すまん。
 考えごとをしていた」
と千紘は言う。

 ……もっと違うとこ見て、考えごとしてください、と思ったとき、店の入り口の扉が開き、家族連れが入ってきた。

 家族でお夕食かーと眺めていると、父母姉弟という構成のその家族のお姉ちゃんらしき人物がこちらを見ていた。

 まてよ。
 この顔には見覚えが……と真昼は思ったが、千紘はまったく気づかず、今度は外のバス停でバスを待つご老人の後ろ頭を眺めている。

 考えごとをしているときの千紘さんにとっては、あのおじいちゃんのニット帽の後ろ頭も私の顔も変わりないのですね、と少しさみしく思ったとき、

「先生」
とその女の子が話しかけてきた。