ああ、さっきまで、水も食料もない陸の孤島に居て、惨劇に巻き込まれていたのに。
こんなあったかいお風呂に入れるなんて、なんて幸せなんだ、私は、と思いながら、真昼は風呂につかっていた。
すると、洗面所に千紘が来た気配を感じたので、思わず、さっきの漫画の感動的なラストシーンについて語ってしまう。
千紘は適当な相槌を打ってはいたが、一応、聞いてくれているようだった。
そこで、ふと、思い出す。
今朝、聞きそびれたことを。
高校は給食はないので、お弁当を持っていったほうがいいんじゃないかと常々思っていたのだ。
だが、他の先生方も見るかもしれないのに、私なんぞが作ってもいいのだろうかと悩んでいたので、訊いてみる。
すると、千紘は、
「私作ってもいいでしょうかって、お前が作らなきゃ誰が作るんだ?」
と言ってきた。
いつも通り、皮肉っぽい口調ではあったが。
お前が作らなきゃ誰が作るんだという言葉に、偽装とはいえ、俺の妻はお前だけだろうと言われた気がして、ちょっと嬉しかった。



