千紘さんのありがた~いお話

「すみません。
 晩ご飯の支度が終わって、ちょっと読もうと思っただけだったんですが。

 怖いのに止まらなくて」

 ……なんだって、こんな怖い本を、と真昼は呟いている。

 よく見れば、部屋の隅に、紙袋があって、中に漫画が山積みになっていた。

「どうしたんだ? これ」
とキッチンに向かう真昼に訊くと、

「借りたんです」
と言う。

「誰に?」

「どっかの学校の生徒さんです。
 ほら、千紘さんがいつか私としゃべってるのを見たっていう」

「……門馬か?
 いつの間に本借りたんだ。

 金網に張り付いてて、おかしな人だと思われたときか」

「おかしな人だと思われてたんですね、私……。

 いえ、そうでなくて、書店にゲームソフトのコーナーもあるじゃないですか。

 龍平くんが眺めてたソフト、持ってるんで貸してあげたんです。
 そしたら、漫画貸してくれました」

「学生か」

 そこで、真昼は、あっ、と気づいたように叫び、鍋つかみをつかんだままやってくる。