千紘さんのありがた~いお話

 家に帰ると、真っ暗だった。

 普段が普段なので、一瞬、

 ……出て行った!?
と思ってしまったが。

 だが、真昼は戸を締め切った、テレビのある部屋でラグの上に前のめりに倒れ込むようにして漫画を読んでいた。

 礼拝か? という体勢の真昼に、

「真昼……」
と声をかけるが返事はない。

 本を見る真昼の顔はやけに緊迫している。

「真昼っ」
と大きめの声で、呼びかけると、真昼は、ひいいいいいっ、とホラー漫画に出てくる登場人物のような顔でこちらを見た。

「あ、ああ、千紘さん。
 どうして、この呪いの村に……?」

 なんの村だ。

「なに読んでんだ、お前」
と言うと、ようやく正気に返ったらしい真昼が、いやあ、と本を部屋の隅に伏せて笑いながら、立ち上がる。