千紘さんのありがた~いお話

 



「千紘さん、先にお風呂どうぞ」

 上機嫌で家に帰った真昼はすぐに、そう言ってきた。

 風呂は出る前に予約してあったので、すでに入れるようになっている。

「お前、先に入れ」
と言うと、

「いえいえ。
 私、長いので」
と言った真昼は、では、と着替えにか、寝室にこもってしまう。

 少しの間、風呂には入らずに、そこに立っていた。

 だが、結局、なにも言えずに、風呂に入る。

 いつまでこんなことが続くんだろうな。

 蒸気でくもる風呂の鏡を見ながら思う。

 俺が一言、言えばいいんだろうか。

 偽装でいいと言ったのは、そう言わないと、お前が話を受けないと思ったからだと――。