千紘さんのありがた~いお話

 麗花にもらった万札は自動販売機に入らないし。

 民家の横の古い自動販売機は案の定、カード類は使えなかったからだ。

 おうっ。
 なんとか足りたようだ、と真昼は甘くない缶コーヒーと麦茶を買う。

 本当は緑茶ですっきりしたかったのだが、今から飲んだら、寝られなくなりそうだったからだ。

 早く戻らないと、道が狭いから、車、邪魔になるよねーと真昼は急いで車に戻った。

 まあ、遅い時間なので、そんなに走っている車も居ないのだが。

「はい、千紘さん」
と車に乗り、缶コーヒーを渡すと、千紘は、ありがとう、と言って、一口飲んだだけで、車をスタートさせた。

 ……本当はこういうとき、開けてから、はいっ、て渡した方がいいんだろうけど。

 そんなことすると、なんだかカップルみたいで、照れるではないですか、と偽装夫婦の妻は思う。

 車がぐるっと回って湾岸沿いの道に出ると、遠くに停泊している船が見えた。

「お城みたいですよねー」
と不夜城のように輝くその船を見る。