千紘さんのありがた~いお話

「この間、見ましたよ、二人で歩いてるの」

「あ、ああ、スーパーでですか?
 橋のとこの激安の」

「いえいえ、百貨店でですよ。
 ご夫婦で楽しそうに歩いてらしたじゃないですか」

 ぼとっと千紘はファイルを落としそうになる。

「まあ、どうしても、父兄の目とかありますから、デートとか、家族でゆっくりとかするのは遠方で、になりますよね~」

 そこで、佐村は、にんまり笑い、

「でも、そう思って、どの先生も、みんな羽伸ばしに遠くに行ってますから。
 遠方だからって、気を抜かないで、気をつけた方がいいですよー」
と言ってきた。

 そ、そんなところまで手が回っているとはっ。

 俺の野望がっ、と思いながら、慌てて自宅に帰った千紘は思わず、叫んだ。

「真昼っ。
 何処までも、追っ手がっ!」