千紘さんのありがた~いお話

「いや、カメは横を歩いてただけなんですけど」
と言うと、千紘は、

「本当にカメが居たのか……」
と自分で言っておいて驚く。

「で、そのあと、カニに出会って」

「カニ?」

「カニが困っている風だったので、助けてあげました」

「お前はカニが困ってるかどうか、わかるのか」

「いや、人に踏まれそうなところに居たんで、溝の辺りまで連れていって放してやったんですよ」

 カニの恩返しがあるかもしれません、と言うと、

「お前はカニに、なにを求めてるんだ」

 せめて、銭のなるカネに期待しろ、と言われる。

 いや、だから、買い忘れたんですってば、と思っていると、千紘が、
「ところで、カメが居たり、カニが居たりした、そこは何処なんだ」
と訊いてくる。

「いつもの書店です」

「書店にカニが居たり、カメが居たりするのかっ」