千紘さんのありがた~いお話

 



 午後十時、歩き疲れた二人の部屋の電気はもう消えていた。

 千紘はベッドの中で布団をかぶり、じっとしていた。

 ……どうだろう。

 誰もが浮かれる旅行中だが、偽装夫婦なのに、二日連続というのは、まずいだろうか。

 スーツケースじゃなくて、さっき、土産物を送るのに真昼が見ていたダンボールに詰められるかもしれん。

 いや、そもそも、真昼は、もう寝てるんじゃないだろうか。

 寝てたら、起こすのは可哀想だし、と以前よりは余裕があるので思いながら。

 音を立てないよう、そうっとベッドから出てみた。

 目を閉じている真昼の顔を覗き込んでみる。

 見合い写真で見たときと同じに、白くて丸くて愛らしい。

 なにかこう……ありがたいような顔だな、と思って、ぷっと笑う。

 真昼に言ったら怒り出しそうだが。

「おやすみ、真昼」
と言って、そっと彼女が起きないよう、軽く触れるだけのキスをした。