千紘さんのありがた~いお話





「いや~、奈良は田舎で落ち着きますねーっ」

 飛鳥あすか駅に着いた途端、大きな声でそう言った真昼に、千紘が、ひっ、という顔をして、周囲を見回した。

「京都ほどは観光客もみっしり居ないしっ」

「でかい声で言うな、でかい声でっ。
 お前、奈良の人に喧嘩売って歩いてんのかっ」

 奈良の人に謝れ、と言われたが。

「いえいえ、私、奈良のこの(ひな)びた感じがとても好きなんですよ」
と真昼は笑う。

 なんとも言えない、気持ちのいい風が明日香(あすか)村には吹き渡っている気がする。

「そういえば、いつぞや、飛鳥鍋を披露してくれたな」

「前から疑問だったんですが。
 何故、明日香村で食べる飛鳥鍋は、明日香鍋じゃないんでしょうね?」

「……いいから、とっとと歩け」