千紘さんのありがた~いお話

 いや、なにを?
と思っている間に、抱き寄せられる。

 いやいやいやっ、千紘さんっ、あのっ。

「もう疲れてるので、今日はっ」

「そうか。
 じゃあ、早くしよう」

 だから、なにをっ、と思いながら、逃げ出そうとしたが、手をつかまれた。

「す、すみません。
 離してくださいっ」

「何故だ。
 よく考えたら、偽装とはいえ、ちゃんと戸籍上は夫婦なんだから、なにをしても問題はないはずだ」

 ありありですよっ。

「でも、千紘さんっ。
 夫婦って、それだけじゃないと思いますっ。

 そういうことするのだけが夫婦じゃないです。
 ふたりで仲良く鍋をつつく、それもまた夫婦だと思います」

「そうか、いい話だな」
と千紘は頷いてくれた。