千紘さんのありがた~いお話

 



 やはり、閉めるか。

 まあ、真昼だからな、と思いながら、千紘は変わった形に湾曲しているが、座ると妙に落ち着く、赤い布張りの椅子に腰を下ろし、見るともなしに、新聞を眺めていた。

 知り合いの先生なんかは、もう奥さんは平気で、下着姿で風呂上がりはウロウロしているとか言っていたが、こいつはまだ、そういうこともなさそうだな、と思う。

 そのとき、テーブルの上に置いておいたスマホから、いい匂いがした。

 さっき、真昼がくれた匂い袋をつけたのだ。

 紺と金の上品な色合いのその匂い袋を鼻に近づけると、伽羅の香りを強く感じた。

 それにしても、浮気していると思って腹を立てている男とおそろいのお香を買うってどうなんだろうな。

 たぶん、本気で浮気してるとは思ってなかったんだろうな。

 ちょっと不安になっただけで。

 俺の愛が伝わり始めたということだろうか。

 しかし、嫉妬されるというのは悪くないな、と千紘は思っていた。

 なにやら愛されている感じがする。