仕事が終わり、慌てて新幹線に飛び乗った千紘は、一息ついたあとで、笑い出しそうになる。
なにがどうして、新幹線に乗ってるんだ、俺は、と思ったら、おかしくなってきたからだ。
昨日、北坂先生を送っていって、お茶をご馳走になったあと、山で迷子になってしまった。
「帰り道はわかるの?」
と訊かれて、大丈夫です、と答えて出たのに、すぐに訊くのも恥ずかしく。
北坂先生に電話しないでいるうちに、電波が入らない場所に入り込んでしまった。
ナビもなにも応答してくれない。
此処は日本か? と思いながら、街灯もないような山道を走った。
昔の日本って、きっと、こんなだったんだな、と思うような息苦しいくらいの暗さだった。
月が陰ると本当に辺りは真っ暗になる。
車のライトの明かりも吸い込まれる暗闇とは、こういうのを言うんだろう、と思う。
深い深い山の中では、こんな人工的な光なんて、なんの役にも立たないくらい小さな存在なんだなと実感した。



