千紘さんのありがた~いお話

『北坂先生んち、ちょっと遠いらしいからね。
 じゃ、ごはんなんでーっ』
と陽気に言って、愁子は電話を切ってしまった。

 ああっ、田所さんっ、と思ったが、晩ご飯では仕方がない。

 今、お腹を空かして、千紘を待っている真昼は切実にそう思っていた。

 もう一度、千紘にかけてみるが、出ない。

 千紘さんは、電波の届かない地域に居らっしゃるか、電源を入れていらっしゃらないようです。

 でも、北坂先生んちは遠いって、今どき、どんな山の中でも電波届くのにっ。

 そんな届かない場所なんて、この辺にあるわけありませんーっ、と思う真昼は山を舐めていた。