千紘さんのありがた~いお話






 ……千紘さんが帰ってこないんですけど。

 真昼は、ひとり、テレビの前に座っていた。

 天気予報を見ながら、今日は、ほかほかの親子丼とざる蕎麦なのに、と思って、膝を抱えていたのだ。

 やがて、真昼は立ち上がり、今度は室内をウロウロし始めた。

 お腹も空いてきたし、先に食べちゃいますよ、と思いながら、食べないでいるうちに、とっぷり夜も更けてきた。

 千紘さん、なんで帰ってこないんだろ。

 まさか、この妻に嫌気がさして出ていったとか?

 ……偽装の妻なのに、酔った弾みで手を出してしまって、面倒臭くなって、出ていったとかっ?

 自分に自信がないので、ついつい、発想が悲観的になる。

 震える手で千紘のスマホにかけてみたが、電波の届かない地域に居るか、電源が切られています、と言われてしまった。

 無性に不安になり、今度は愁子に電話してしまった。