千紘さんのありがた~いお話

 朝が早いアパートの住人が、車に乗って出かけていく音がする。

 真昼に殴られる覚悟で、そっと彼女の許に行く。

 真昼はもう起きて、なにやらゴソゴソしているようだった。

 わずかにドアを開け、覗いてみる。

 真昼は何故かキッチンと続きになっているダイニングで、スーツケースを広げて見ていた。

 まさか、こいつ、俺をスーツケースに……?

 千紘の頭の中では、真昼が自分を捨てようとして、スーツケースに詰め込もうとしていた。

 その(かたわ)らに立つのは、門馬龍平。

 おのれ、門馬め、と思ったとき、ドアを開けていた。

 真昼が振り返る。

「なにしてるんだ?」

 そう問うと、一瞬、黙ったあとで、真昼は言う。

「捨てようかと思って……」

 俺を!?