千紘さんのありがた~いお話

「つ、妻とは言っても、偽装ですっ」
とせめて頭を手で隠して小さくなり、真昼は言った。

「誰が偽装だと言ったんだ」

「いや、貴方ですよっ」
と返しながら、

 ああ、タチの悪い酒だ、と思っていた。

 まったく酔ってないように見えるのが、またタチが悪い。

 真昼はまだ頭を押さえたまま、薄目を開けて、チラと見てみた。

 目の前に居るのは、いつも通りの格好いい、冷静な千紘だ。

 ああ。
 きっと、酔った弾みで私を慰みものにしようとしているだけなのだろうに。

 まるで、本当に私を好きで、迫ってきてるみたいに見えるから困りものだ。

 そう思ったとき、
「真昼」
と腕をつかまれ、引きずり起こされた。

 千紘の顔が目の前にある。

 どうしよう、逃げられない、と真昼は思った。