千紘さんのありがた~いお話

「そ、そうなんですか。
 おやすみなさい」
と適当なことを言って、真昼はドアを閉めようとした。

 所詮は酔っぱらいだと思ったからだ。

 だが、ガッと足でドアを止められる。

 ひーっ。
 如意棒ーっ、と慌てて周囲を見回すと、その動きを冷静に見ていた千紘に、

「如意棒はない。
 そして、これはドアで、引き戸ではない」
と言われる。

 超能力ーっ、とまた思い、ドアを押さえることを諦めた真昼は、ベッドの向こうに逃げようとしたが、手をつかまれる。

「何故、逃げる。

 俺が嫌いなのか」

 いや、嫌いか、嫌いじゃないかと言われたら、嫌いじゃない気がするんですがっ。

 っていうか、よく考えたら、嫌いな人に、偽装結婚しようって言われても、頷かない気がするんですけどっ。

 と、そこまで、考えて、

 ……おや?

 じゃあ、なんで逃げてんだろうな? と思わなくもなかったが、条件反射だ。

 なんか怖いっ。