千紘さんのありがた~いお話

 あのとき、

『どんな夢だ。
 全部叶えてやるから言ってみろ』

 そう言われたときには、なにもときめかなった。

 この人、とりあえず、誰かと結婚したくて言ってるんだろうと思っていたからだ。

 でも、今は違った。

 言われた瞬間、心臓が止まりそうになった。

 だが、そのことを悟られないよう、適当に話を合わせ、会話を続ける。

「どうしたんですか? 急に」
と言うと、千紘はいつものように無表情なまま、

「いや、大谷が……」
と言ってくる。

「大谷?」

「大谷哲夫だ。
 お前、高校生に顔が広いから知ってるか?」

 それはなんの嫌味だ、と思ったが、大谷哲夫は知っていた。