千紘さんのありがた~いお話

 話しやすいように、真昼に酒を勧めた。

 もちろん、真昼が酒を断るわけもなく、すんなり呑んでいた。

 自分もしゃべりやすいように、少し呑むことにする。

 真昼は呑気にテレビのお笑い番組を見て、笑っている。

「真昼」
と呼びかけたあとで、千紘は困った。

 大谷。

 あのセリフ、どういう話の流れで言えばいいんだ?

 お前に指示されたセリフを言う前に、なにか俺には言うべき言葉があったんじゃないのか?

 だが、そのことに今、気づいても、もう遅い。

 すでに真昼には呼びかけてしまっている。

 生意気な生徒を言い負かす言葉なら、いくらでも思い浮かぶのに、今、此処で出すべき適切な言葉は、なにも思い浮かばなかった。

 だが、真昼は、自分を見つめている。

「ま、マヒル」

 表情は変わらなかっただろうが、焦って出した言葉は、少しカタコトになっていた。

 慌てて口調をただし、できるだけ落ち着いた声で言ってみた。

「真昼。
 お前の望みなら、なんでも叶えてやるぞ」