結局、峰子にお茶をおごってもらい、お友だちにも配って、と言われ、パンフレットを山と抱えた真昼は、飴を舐めながら、電車に乗って、バスに乗る。
夕闇の中、山を越え、町が見えてくると、ホッとした。
山に囲まれた小さな町を見下ろしながら、不思議なものだな、と思う。
今、この光景を見たとき、帰ってきた、と思ってしまった。
仮の妻で、仮の住まいで、仮の暮らしのはずなのに。
なんだかもう、此処が私の一番落ち着く場所になっている。
そんな風に思いながら、真昼が乗る人の少ないバスの中で、ふふっ、と笑っている頃、千紘は道の真ん中で、一点を凝視していた。



