千紘さんのありがた~いお話

「あんたですぐ決まったのに、まいたりしないわよ。
 そういえば、あんた、ご飯は?」
と訊かれ、駅でパンをかじって、電車を待った、と言うと、

「なにやってんのよ」
と呆れたあとで、峰子は、

「千紘さんは、いい男でおぼっちやんだけど。

 いろいろ細かそうだし、変わってるっぽいから、普通の女じゃ合わないだろうと思って、あんたにしか渡してないわよ」
と言ってくる。

 そう、と言ったあとで気づいた。

「あ、待って。
 私ももらってないわよ、釣書」
と言うと、ああ、そうそう、そうだった、と机の中をごそごそやり始める。

 ずいぶん適当だなー。
 さっきのまいてないという話も怪しいな、おばさん、と思う真昼の前に、峰子は千紘の釣書を差し出してきた。

 職場に提出する書類か、と問いたくなるような、味も素っ気もないそれを見て笑う。

 この書類が例え、女の人にたちにまかれていたとしても。

 これじゃ、千紘さんのいいところも、面白いところもわからないよね、と思ったのだ。