千紘さんのありがた~いお話

「いや、おばさん。
 そんなことで此処まで来るわけないじゃない」
と言うと、

「じゃあ、なによ」
と言う。

「おばさん、千紘さんの履歴書まだ持ってる?」

 履歴書って、就職か、と峰子は言ったあとで、
「ないわよ。
 千紘さんからは、あんたに渡したあの一枚しか預かってないんだから」
と言ってくる。

 ホッとした真昼は、
「そう。
 じゃあ、また」
と帰ろうとして、

「ちょっと、あんた、なにしに来たのよ。
 あの山ん中からわざわざ」
と呼び止められる。

「山じゃなくて、海よ」

 山越えてくるけど、と思いながら、そう言ったあとで気づく。

「一枚だとしても、コピー取ったりして、まいてない?」