千紘さんのありがた~いお話

「お前と出会ってから、俺はいろんなものを失ってく気がするよ」

 プライドとか、誰にも振り回されずに生きられる自由とか。

 ひとりでずっと気楽だったのに、真昼と出会ってからは、いつもなにをしてても、真昼に心を支配されている。

 でも……。

「でも、なんだかそれが嫌じゃないんだ。
 自分がこんな風になるなんて、想像したこともなかったのに」

 こんなにも一人の女に振り回されて。

 そして、それを幸福だと感じるなんて――。

「……真昼。
 寝たのか?」

 真昼はいつか寝姿を覗き見たときのように、日中動きすぎて行き倒れた小学生のように爆睡している。

 色気のないその姿を無性に可愛く感じ、身を乗り出して、側に手をつくと、彼女が目を覚まさぬように、そっとその額に唇を寄せた。

「おやすみ、真昼」