千紘さんのありがた~いお話

 


 楽しく食事をしている間も、千紘は時折、なにやら考え込んでいるようだった。

 なんだろうな、と思いながら、真昼は小料理屋で刺身を口にする。

 此処に引っ越してきて、はまったアジの刺身だ。

 よそで食べるのと全然味が違っていて、うまく言えないが、甘くて、こう、しっとりというか、ねっとりというか。

 愛嬌のある味だ。

 ……いや、全然うまく言えてないな、と思いながら、真昼は言った。

「へー。
 百人一首大会があるんですか」

 さっき、車に薄い百人一首の本がのっていたので、なんなのか、訊いてみたのだ。

「そういえば、私、百人一首って、百一枚札があるんだと思ってましたよ」
と白状してみたが、スルーされる。

 いや、ぱっと見、なんとなく、そう思いませんかね……?
と思いながら、

「卵焼き頼んでいいですか?」
と千紘に訊いた。