千紘さんのありがた~いお話

 よく考えたら、すりガラスなので、向こうに誰か居れば、丸見えのはずなのだが――。

 そして、無事にドアは閉めたが、真昼は、すっかり怖くなってしまった。

 ひーっ。

 これから髪洗うのに~っ。

 怖いものを見たあとで、もっとも怯えるのが、洗髪する瞬間だ。

 目を開けたら、なにかが居る気がしてしまう。

 まあ、よく考えたら、さっきまで居なかったものが、髪を洗い出した途端に、
「こんにちは」
と現れるはずもないのだが。

 真昼は急いで髪を洗った。

 怖いので、陽気な歌など口遊(くちずさ)みながら。

 慌てて流して、ざぶん、と風呂につかり、ふいーっと思った瞬間、それは居た。

 すりガラスに映る黒い人影。

 にぃやああああああああっ、と真昼は、千紘に、
「お前が、化け猫かっ」
と言われそうな悲鳴をあげた。