千紘さんのありがた~いお話

 ああでもそう、あの占い師さんがこの偽装結婚に間違いはないと言っていたので、とりあえず、まだ、私が千紘さんの側に居てもいいはず――。

 そんなちょっとむなしいことを考えていると、その後ろ頭が目に入った。

 ふわふわっとした茶髪の髪。

 制服姿の女子高生だ。

 気を紛らわそうといつの間にか入っていた書店のゲームソフトのコーナーで、彼女は熱心に、いわゆる乙女ゲームを表にしたり、裏に返したりして、眺めていた。

 少し離れた位置から前に回り込んで顔を確認したあとで、真昼は彼女に、すうっと近づき、後ろから声をかけた。

「貸してあげようか、田所さん」

 いきなり耳許でした声に、田所愁子(たどころ しゅうこ)は、ひっ、と息を呑む。

「あっ、先生の奥さんっ」

「そっちと迷ってるの?」

 愁子の手には別の乙女ゲームがあった。

「こっちなら貸してあげるよ。
 私、もうやったから」

「えっ、ほんとですかっ」
と喜びかけた愁子は、はっとした顔をして言う。