千紘さんのありがた~いお話

「つ、作ります。
 私、頑張って作りますからっ、油揚げっ」
と言いながら、真昼は千紘を押して、キッチンから出そうとする。

 いや、真昼。
 油揚げは、すでに出来ている。

 お前が作りたいのは、きつねうどんだ、と思ったが、真昼が必死なのは伝わったので、突っ込まなかった。

 真昼はキッチンから廊下に向かい、自分を押し出すと、ドアの隙間から少し顔を覗け、

「……決してこちらを見ないでください」
と言って、

 ぱたん、とドアを閉めた。

 ツルか。

 仕方ないので、真昼が寝室にしている部屋で本を読むことにした。

 廊下の向こうには、その部屋しかないからだ。

 おや?
 真昼の奴、此処にスマホとタブレットを置いてるな、と棚の上を見て気づく。

 だが、いるのなら取りに来るだろう、と思い、特には言わなかった。