千紘さんのありがた~いお話

 

 

 冷蔵庫の前で機嫌のいい真昼の後ろ頭を千紘は眺めていた。

 この夏の間に、二人の関係をどうにか進めたいと思ったものの。

 なにをどうしたらいいのやら。

 すでに結婚しているので、逆にどうしていいのかわからなかった。

 とりあえず、普段、心の中だけで思っている感謝の言葉を口にして、好感度を上げてみるとか?

 あるいは、夫婦らしい接触を増やしてみるとか?

 ……夫婦らしい接触ってなんだろうな。

 手をつないで道を歩くとか?

 いや、そんな学生やカップルを見るたびに、莫迦じゃないのか。

 手を引いてもらわないと歩けないのかと思っていた自分がそんなことはできない。

 例え、生徒の目の少ない山を越えた街であったとしてもっ。

 じゃあ、感謝の言葉とともに、抱きしめてみるとか。

 ……余計、恥ずかしくてできんな。