千紘さんのありがた~いお話

「なんで私でいいやと思ったんですか?
 急いで花嫁が必要だったとしても、貴方なら、他にもたくさん、いいお話があったでしょうに」

「言わなかったか?
 お前なら、どんな場所でも適応できそうだと思ったからだ。

 俺も行ったことのない土地だったしな、此処は。
 どんな感じかよくわからなかったから。

 とりあえず、何処へ行っても大丈夫そうな、精神的に頑丈な女がいいかなと思って」

 年頃の娘としては、あまり嬉しくない言葉な上に、エレベーターでの会話だけで、よくそんなことがわかったな、と思ってしまう。

 だが、更に千紘の言葉は続いた。

「でも、来てみたら、此処は、ちょっと日照量の少ない地域で、ちょっと街から離れていて。

 ちょっと雪が降ると、周囲から隔絶されて、陸の孤島みたいになるが――

 まあ、静かでいいところだ」

 今の説明でいいところだと言われても……と思ったとき、視界にそれが入った。

 そうだ。
 この町には、確実にいいところがひとつある!