千紘さんのありがた~いお話

 だが、千紘には、なんとなく、真昼の思考回路がわかるようになっていた。

 綺麗に食べてもらって嬉しい、と昨日、真昼は言っていた。

 その感謝の念を表したい、と思ったのだろうが。

 自分に対して遠慮があるので、こんな他人行儀な口調になってしまったのだろう。

 それにしても、この小さなハートマークにこれだけの文字を詰め込む技術がすごい、と蓋を手にしたまま眺めていると、横で、女生徒たちの声がした。

「あっ、先生っ。
 愛妻弁当っ?

 すご……

 ……すごいね」

 そのすごいね、は愛妻弁当ではなく、海苔で作られた小さな文字に向けられているようだった。

「奥さん、米粒に字が書けるよ」
とよくわからない方向に感心される。

 彼女らはそのまま行ってしまったが、ひとり、田所愁子だけが残っていた。

 この海苔、食べていいのだろうかと、ピンセットでせっせと作ったのだろう真昼の姿を思い浮かべながら弁当を眺めていると、愁子が言ってくる。