千紘さんのありがた~いお話




 お昼休み、お弁当箱を開けた千紘は固まった。

 ……ちらし寿司?
とその配色に思うが、今朝、寿司を作っている風にはなかった。

 錦糸卵に、さやえんどうに、桜でんぶ。

 完全にちらし寿司の具なラインナップだが、酢の匂いはしない。

 単に、色鮮やかだからデコレーションのために使ったようだった。

 まあ、それはいいのだが。

 白ご飯の中央に、桜でんぶで作られたハートマークがどーんとあって。

 その中には、細く刻んだ海苔で小器用に、文字が書かれていた。

『お召し上がりいただきありがとうございます』

「あ、先生、愛妻弁当?」
と笑いながら覗き込んできた隣の席の佐村が、その文字を読んで、

「……業者?
 これ、業者の弁当?」
と呟き出す。

 ハートマークなのに、新婚のラブラブ感が何処にもないからだろう。