千紘さんのありがた~いお話

 



「今日の晩ご飯はドーナツですー」
と真昼が玄関先でドーナツの袋を見せると、千紘は固まっていた。

「じょ、冗談ですーっ」
と慌てて言うと、

「今、すごく腹減ってたから、撲殺しようかと思った」
と靴を脱ぎながら千紘は言う。

 ……心狭いな、意外に。

 低血糖の人だろうか。
 うちの親みたいに。

 母親が低血糖気味になると、ものすごく凶暴化するのだ。

「なのに、いつも食事に行くと、母さんのが最後に来るんだよな。
 店員も人を見ながら出せばいいのに」
と兄、真也がいつぞや語っていたが、本当に洒落にならない。

 それにしても、今度、本当に晩ご飯をドーナツにしてみようかと思っていたんだが……と真昼はちょっとビビりながら、キッチンに戻ろうとした。

 すると、
「ほら」
と弁当箱を千紘が返してくる。