卑劣恋愛

千恵美にこんな元気があるわけがない。


だって、昨日確かにこの目で見たもん。


千恵美が智樹に襲われている場面を……。


そこまで考えて、最後までちゃんと見届けなかったことを思い出してハッと息を飲んだ。


智樹はあの後千恵美を襲い損ねたのかもしれない。


そう考えて、爪を噛みしめた。


「どうしたのノドカ? あたしになにか用事?」


「……なんでもない」


あたしはどうにか怒りを押し込めて、返事をした。


そのまま千恵美に背を向けて自分の席へと向かう。


その時だった、ちょうど教室前方のドアが開いて智樹が入って来たのだ。


あたしはその姿を認めると、すぐに駆け寄った。


「ちょっと、話がある」


早口にそう言い、智樹の返事を聞く前に教室を出た。


少し歩いて廊下の端までやって来ると「どうかしたのか?」と、智樹が声をかけて来た。