卑劣恋愛

ほんの一瞬。


少しだけ中の様子を確認するだけだ。


あたしは自分自身にそう言い聞かせて、そっとドアノブに手を伸ばした。


音を立てないよう、ゆっくりゆっくりとドアを開く。


部屋の光が廊下を照らしあたしは息を殺して書斎の中を確認した。


昨日と同じように、こちらに背を向けて立っている父親の姿がある。


そして机の横には……無数の藁人形が打ちつけられていたのだ。


その光景にあたしは小さく息を飲んだ。


10体以上ありそうな藁人形にはすべて、お姉さんの写真が貼られているのだ。


その光景だけでも異様なのに、お姉さんの写真はすべて隠し撮りされたものみたいだった。


その証拠に、カメラ目線の写真は1枚もなかった。


まさか父親が隠し撮りをしたんだろうか?


そう考えていると、父親が不意に体の向きを変えた。


咄嗟に身をすくめる。


しかし、横向きになった状態で動きを止めた父親はあたしに気が付いていないようだ。


ホッと安堵するあたしの目に映ったのは、藁人形に五寸釘を打ちつけながら恍惚とした表情を浮かべる父親の姿だった……。