「二木千恵美、二木千恵美、二木千恵美……」


放課後、サッカー部の練習を観戦した後、あたしはブツブツと呟きながら家へ向かった。


教室後方で会話をしていた2人の光景を思い出し、発狂しそうになり立ち止まる。


歩道の隅で頭をかきむしり、ガリガリと爪を噛む。


まさか千恵美が武に近づいているなんて思ってもいない出来事だった。


武のファンたちは全員蹴散らす事ができたと思っていたのに……!


しかも、千恵美はあたしたちと同じA組の生徒だ。


武に接触しようとしたら、いくらでも可能だった。


「武が照れ屋じゃなければ、教室にいるときもず~っと一緒にいるのに……」


想像したら、また鼻の奥から血が流れ出して来た。


「大丈夫だよ武。あたしと武の邪魔なんて、だぁれにもさせないからねぇ?」


鼻血を手の甲でふいて、あたしはニタリと笑ったのだった。