「すぐに武が助けに来てくれたから、平気だよ」


「よかった……!」


武は目に涙を浮かべて再びあたしを抱きしめる。


あたしは武に抱きしめられながら、チラリと千恵美へ視線を向けた。


千恵美は悔しそうな顔を浮かべて黙り込んでいる。


ざまぁみろ!


今回は完全にあたしの勝利だ!


千恵美は智樹を監禁、拷問しても自分のものにはできなかった。


でもあたしは武を自分のものにできたんだ。


その事実さえあれば、もうなにも怖くなかった。


あたしは痺れる足を引きずるようにして歩き出した。


武がしっかりと支えてくれる。


「ちょっと! 逃げられるよ!?」


我に返ったような千恵美の言葉を聞いたのは、すでに階段を上り切った時だった。


「捕まって」


武はそう言うと、あたしの体が抱っこした。


簡単にフワリと持ちあがった体に心臓が跳ねる。


「行くよ」


武はそう言うと、玄関まで一気に走ったのだった。