「お前さ、ちょっとどっか行っててくれないか? 俺今千恵美と話してるんだけど」


武がいかにもめんどくさいという表情であたしに言う。


その瞬間、胸が微かに痛んだ。


武のことは理解しているし、照れ屋だからあたし達の関係を隠したいことだってわかる。


でも、そんな言い方をされたらさすがに傷ついてしまう。


「そっか……。でも、ひとつだけいいかな? 武に聞きたいことがあったんだけど」


その質問に、武は答えなかった。


天井を向いてあたしと視線を合わせないようにしている。


それだって照れ隠しだって、ちゃんとわかってるよ?


「明日から武にお弁当を作ってきてあげる。オカズはなにがいいかな?」


あたしは千恵美へ視線を向けながら質問した。


千恵美は怪訝そうな表情であたしを見ているが、なにも言わない。


武の彼女であるあたしに、文句なんて言えるワケがないよね。


「は……?」


武は唖然としてあたしを見つめる。


「あ、ここで言うのは恥ずかしい? それなら後からメッセージ送ってね?」


あたしはニコニコと笑顔でそう言い、自分の席へと戻ったのだった。