あたしに睨まれたことがショックだったのか、智樹は後ろから声をかけてもこなかった。


少しかわいそうだけど、これでいいんだ。


智樹だってもうすぐ千恵美の良さに気が付くはずだ。


そうなれば、あたしのことなんてどうでもよくなるに決まっている。


鼻歌を歌いながら歩いていると、後ろから足音が近づいて来た。


智樹が追いかけてきたんだろうか?


そう考えて歩みを緩めた、その瞬間だった。


わき腹になにかを押し当てられたと感じた時、バチンッと大きな音が聞こえた。


同時にあたしの体は崩れ落ちていたのだ。


全身に衝撃が走り、立っていることができない。


アスファルトに横倒しに倒れる瞬間、スタンガンを握りしめた智樹の笑顔が見えたのだった。