「千恵美が好きなのは智樹だよ。千恵美は武のことをストーカー呼ばわりしてたじゃん」


「そんなの嘘だ。ただのごまかしだ。だって千恵美は体を触らせてくれた」


その言葉にあたしは気分が悪くなるのを感じた。


千恵美が武に無理矢理胸を触れさせていたことを思い出してしまった。


「無理矢理触らされたんだよね？　気持ち悪い」


「無理矢理？　そんなわけないだろ」


「嘘だよ。武があたし以外の女に触れたいわけないもん」


「そんな……！」


言い返そうとする武の腹部にカッターの刃を強く押し当てた。


すると武は途端に黙り込む。


ほらね、千恵美への気持ちはこの程度のものなのだ。


そんなの本気の愛とは言わない。


あたしが一刻でも早く目覚めさせてあげなきゃいけないんだ。


「それを食べたら、早くクローゼットに戻ってね？　それでまた愛してるって聞かせてね？」


あたしはうっとりとした表情で言ったのだった。