千恵美は飴と鞭を使いこなして、智樹のことも奴隷にするつもりだったのかもしれない。


「武が千恵美と一緒にいるの」


そう言うと、智樹は一瞬視線を泳がせた。


智樹からすれば武は邪魔者だ。


武がどうなろうと知った事ではないだろう。


「千恵美は武を犬みたいに扱ってる。あたしは絶対に許せない」


あたしは拳を握りしめて言った。


「その手は……?」


手の怪我に気が付いて智樹が言う。


「千恵美にやられた」


「嘘だろ……」


憔悴していた智樹の表情に、火がともるのを感じた。


やっぱり智樹はあたしのためならいくらでも動いてくれるみたいだ。


「今度はあたしたちが千恵美に反撃する番だよ」


あたしはそう言い、智樹の手を取って立たせたのだった。