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智樹の爪はすべて剥がされていた。


手の指も足の指も腫れ上がり、真っ赤に染まっている。


「爪を剥がされたの?」


どうにかクローゼットから出て来た智樹にそう聞いた。


「あぁ……。『千恵美のことが好きだ』そう言うまで何枚も剥がされた」


智樹は憔悴しきった様子で答える。


「そのくらい、言ってあげればよかったのに」


「最後の方はすぐに返事をするようにした」


「食事やトイレは?」


「千恵美が持ってきてくれたものを食べてたよ。返事が早ければ早いほど真面な食事だった。でも返事が遅いと持って来られるのはネズミとか、ゴキブリの死骸だった」


智樹は大きく息を吐きだして答える。


「トイレは大人用のオムツをつけられてるんだ。でも、変えてくれるのは1日1回だけだった」


どうやら智樹はあたしよりももっとひどい目に遭っていたみたいだ。