山を下りたあたしは真っ先に千恵美の家へ向かった。


今のあたしの姿はボロボロだったけれど、そんなこと関係なかった。


「すみません、お邪魔します」


玄関が開いた瞬間あたしはそう言い、千恵美の母親の体を押しのけて家に侵入した。


「ちょっと、あなた誰なの!?」


「千恵美の友達ですよ」


淡泊に答えて、家の中のドアを全部開いて確認して行く。


家の場所は知っていたけれど、さすがに千恵美の部屋まではわからなかった。


そして1つだけ、鍵のかかった部屋を見つけたのだ。


「ここが千恵美の部屋ですか?」


そう聞くと、千恵美の母親は「千恵美は今いません。後にしてもらえますか」と強い口調で言って来た。


あたしは大きくため息を吐きだす。